ライトな1日

WONO2007-12-20



午前中から大手町へ。地下鉄的にも地上ストリート的にもアウェイ感バリバリな土地ではある。ネクタイしていない男がほとんどいないし。


今日はライティングオブジェ展の搬入日。現場となっている東京ビルTOKIAに赴き、当方が音楽を担当した東宮洋美さんの作品『カレイドテーブル』の現況チェック。


サウンド的には特に問題なかったが、時間的に日射しが強くて映像がよく見えなかったのが残念。というのも、この作品はテーブルの天板がガラススクリーンになっていて、そこにテーブルの内側から万華鏡のような美しい映像が照射されるというものなので。お酒やお茶でも飲みながらボーッと過ごすのに良さそうなオブジェである。


というか、DVDプレイヤ、CDプレイヤ、スピーカ、小型プロジェクタがテーブル内部にすっきりとビルトインされているので、これは実用家具としても十分売れるんじゃないかという気もします(ちなみにこの展覧会、チャリティ・オークションも兼ねています)25日以降は大手町カフェに運ばれて、実際にそうやってのんびり楽しむ事が可能になるらしいので、この界隈に用事のある方ぜひお立ち寄りを。


さてその後、バタバタしていて昼食をとりそこねたまま銀座に移動。こちらもライトがらみ。先日は展覧会見物にうかがった東海林さんのオフィスで、今日は極秘プロジェクトのミーティング。


依頼主というのは常に、言葉にならない感情や感覚、形にならないアイディアをもやもやと抱えて我々の前に現れる。そこに言葉を与え、形を見つけ、ゼロから何かを実現してみせるのが我々の仕事。それを一言で「デザイン」と呼んでも良い。


東海林さんの場合、さすがはハードな建築業界で海千山千の相手と渡り合ってきただけあって「打ち合わせにおけるデザイン力」も見事なもの。「うーん、これはどうしたら…?」と腕組みしてしまうような案件にもスカッと切り口を見つけ、解決に結びつける手腕は、大いに参考にさせていただきたいと思った(極秘なので詳しく紹介できないのが残念)


大事なのは「言葉」。アイディアがあるから言葉が出てくるのではなくて、「言葉」が見つかった瞬間からアイディアはどんどん溢れ出す。背後に膨らむ無限のイメージ世界をずるずるとたぐり寄せるための「タグ」として、誰もがピンとくる語呂の良い言葉(キーワードとかキャッチフレーズと呼んでも良い)を的確に発することができるかどうか。それこそが、ミーティングを活性化するのに不可欠の能力かもしれない。

まさに師走


朝7時、渋谷を出て大学へ。午前中から入試監督業務。それから支給された弁当を大急ぎでかっこみ、昼からは学科会議。会議は波瀾万丈。定刻より1時間も延長。その後も大学の超機密業務に従事。夕方まで続けた後、いったん帰宅。機材を抱えてタクシーに飛び乗りトラウマリスに駆け込む。既に会場入りしているメンバーと合流して、ブラックベルベッツサウンドチェック。店外楽屋(近くの居酒屋)にて今夜の選曲会議。そしてライヴ本番を2ステージ。終演後は店主の好意でシャンパンやクリスマスディナーのご相伴にあずかる。そんなこんなで全て終えて帰宅したら25時ちょい前。キーマガ連載が年末進行のためもう〆切なのだが、書けないまま昏倒…

デリシャス!

WONO2007-12-18



銀座で開かれている展覧会『アライトデザイン展 〜光の音色〜』を、妻子と訪れた。


これは年上の友人である東海林弘靖さんの展覧会。彼は最近『デリシャスライティング』という本を出版した照明デザイナーなのですが、これはそのブク発(『レコ発』に習って出版記念イベントをこう呼んでしまおう。←たぶん誰も追従しない)企画です。


銀座の古いビルヂング奥野ビル」の3室を使い、照明を使ったオブジェが展示されています。この建物自体も渋い。手動ドア式のエレベータ(ヨーロッパなんかで見かける“鳥かご型のエレベータ”を思わせる)とかあって、建築好きな方なら興味深いと思います。


で、この『デリシャスライティング』が実に面白い本なのです。要するに、インテリア照明を「料理」に見立て、どうせなら家庭料理だって美味しく作りましょうよ、と素人でも簡単にできる様々なレシピやアイディアを提案している書物。


本人いわく「照明の力は、9回裏の大逆転みたいなものがあるんじゃないかと常日頃思っています」とのこと。確かに確かに。豪華な部屋で貧しい照明ってのと、たとえ小さな四畳半でも洒落た照明の部屋を比べたら「勝敗」は歴然ですよね。


とは言え実のところは「間接照明?そりゃオシャレかもしれないけど、暗くてモノがよく見えないんじゃ困るなあ」なんて感じで、引っ越した時についてた天井蛍光灯をそのまま使いっぱなしの人も多いんじゃないでしょうか。カフェとかバーみたいなインテリア照明はあくまで「よそいきのあかり」であって、「ふだん着のあかり」にはちょっとね…みたいな感じで。


また、仮にちょっとインテリアに興味があって「うちもちょっとカフェっぽくしたいんだけど…」なんて思ってても、じゃあどう実践するのか。当方を含め、素人にはこれが難しいんです。だいいち情報がないでしょう。


建築系の専門誌は小難しいし。では書店に山ほどあるインテリア本を見ればわかるかと言えば、そのほとんどは単に「こんな部屋に住みたいわねー…」という願望を一瞬の疑似現実として味わわせてくれる「観光カタログ」にすぎない。


お洒落なブランド照明器具という「ハード」は紹介されていても、それをどう使うのかという「ソフト」の記事がほとんどない。せいぜい「◯◯さんちのリビング」といったケーススタディが掲載されている程度。料理にたとえれば、洒落た料理が写真で紹介されてはいるけれど、作り方や材料についての説明が手に入らない、そういう状態がほとんどではなかろうか。


しかし、どの分野でもそうだけど、実際に自分でやろうと思った時、本当に有益なのは具体的な個々の実例よりも、本質的な方法論やロジックではないかと思います。


この本でも確かに多くの具体例が紹介されています。しかしそこには「なぜそういう光の使い方をするのか」という根拠やロジックが説明されているので、読み進めるうちに「調光器をつけるだけで照明器具が表情を持つ」とか「物体の背後に光源を隠すと、その物体が表情を持つ」とか「同じ明るさなら、明るい光源を1個だけ使うよりも暗めの光源を複数使った方が立体感のある空間になる」といった「法則」がわかってきます。


そしてこの「法則」さえおぼえれば、この部屋だったらこんな光にしよう…なんて計画できる「応用力」が身につく。料理と同じように、冷蔵庫にある材料だけでも手軽に美味しい一皿をつくることができるようになるのではないかと思います。


自分自身の話をすれば(これは自慢ですが、本書の中でちらっとふれられている『照明好きな音楽家』とは実は当方の話でした)貧乏な若い頃からインテリア照明だけは異様に好きで、と言ってもラリックのランプを買うとかそういう事ではなくて、裸電球を家具の背後に仕込んだり蛍光灯をブラックライトに変えてみたりといった程度の事ですが、お金をかけずに試行錯誤を続けてきました。何よりも、6畳一間のワンルームが照明ひとつでなんとも落ち着ける空間になるのが楽しかったのです。


そんな試行錯誤も、必要に迫られて色々と工夫できたという意味では良かったと思いますが。当時もし本書があったら、もっとスマートに効果的な照明が作れたのになあ。と、今も大学の個人研究室では天井のいかにも学校っぽい蛍光灯は使わず、自前で取り付けた白熱灯ランプで過ごし、研究費でミラーボールやらムービングライトやら購入して悦に入っている当方は思うのです。




*本書の公式サイト http://www.deliciouslighting.jp/ でも、照明について様々な知識が得られます。興味ある方はぜひご一読を!

小川範子ベスト

WONO2007-12-17



先ごろ小川範子さんのベストアルバムが発売されました。


小川範子アルバムベスト☆ -セルフ セレクション- 魔法のレシピ(DVD付) [CD+DVD]


正直、うわーこんな仕事してたな、懐かしいなあという感じ。当方がプロデュースし、”OGAWA”名義で発表したアルバム『湿地帯と金魚』『ホオズキ』『人喰い』など、現在廃盤で入手しにくいものが多数含まれています。


歌ものポップスの作編曲という点で言えば、ボッサやフレンチテイストの色濃い楽曲の傾向を含めて、かなりやりたい放題やらせていただいた仕事。菊地成孔渋谷慶一郎、徳澤青弦、五十嵐一生(敬称略)等々、個性の強いミュージシャンたちに参加していただいたのも今となっては良い思い出です。興味を持たれた方は、ぜひご一聴を。

恒例ディナーショウ

WONO2007-12-16



さて今週は毎年恒例の企画。ディナーショウというタイトルはシャレですが料理は本物です(当方の好きな台詞、『酒は偽物だが酔いは本物だぜ』とつぶやきながら安酒を飲む男という話がありますが…関係なかったか)

BLACK VELVETS
X'MAS DINNER SHOW
at TRAUMARIS


DINNER TIME 20:00 - 21:00
BAR TIME 21:00 - MIDNIGHT
LIVE 21:00- / 22:30- (予定)
トラウマリス (港区六本木6-8-14 アートコンプレックスビル1F TEL 03-5411-0220)
LIVE: ブラックベルベッツ
CHARGE: 2000円+DRINK ORDER


DINNER: 2000円(CHARGE別/要予約)
前菜: 旬のキノコたっぷりの温製サラダ
主菜: 牛肉のシェリー酒煮込み


いよいよこのお店の営業も来年初頭までと決まったようです。
ありえない至近距離の演奏で楽器とプレートが交錯する最後のディナーショウに、ぜひお越しを。演目的にも、年に1度しか演奏できないクリスマスナンバーの数々を一挙上演致しますので。

仕事と大人


インカレ2日目。昨日なんの問題もなかったので今日のリハは学生スタッフに完全丸投げ。駅前のスーパーで買い物したりして、リハの終わった頃に重役出勤(←死語か?)ってかやや遅刻。


今日の仕事はインカレのみなので、じっくりと観覧できた。と言いつつも、進行がうまくいってるかそわそわと気になり完全な観客気分というわけにもいかないのだが。見ていると、昨日に比べてスタッフの反射神経が格段に速くなっているのが面白い。トラブった時にパッと動いたり無線で声かけあったり、なんというか、付け焼き刃ながら「現場の人間」感が出てきた。


こういうのを観てると、チームの一員として仕事を分担し、役割を与えられ、責任を持たされると、人はどんどん「仕事」ができるようになっていくのだなあ、という当たり前の事を再認識させられる。


学生だろうと社会人だろうと、メカニズムは全く同じだ。命令や義務によって動くだけなら労働は拷問だが、目的を理解してチームのために自ら「歯車」となる時、仕事は団体競技スポーツのような「遊び」になる。メンバー全員が目いっぱい「遊び」きった時、その仕事の能率は最高となるのではないか。


そんな事を考えながら観ていたら不愉快な場面にぶつかった。ある演奏者の、演奏後の質疑応答である。詳細は省くが、演奏者に対して発言上は質問の形をとりつつ、上から目線の教えさとすような口調で延々と発言を続ける1人の質問者の態度に、聞いていてムカムカと腹がたってきた。


だからといって当方が立ち上がって反論したりするような場ではないことぐらいわきまえているので黙っていたが、つい「だったらてめえが演ってみろよ」と下品なひとりごとが口からこぼれてしまったぐらいで(あ、黙ってなかったか)リングの外からの見当違いな「評論」によって、闘っている人間の意欲に冷水を浴びせるこの手のセンセイこそは、当方のいちばん嫌いな人種である。


あんまり腹がたったので以下100行ぐらい何がダメなのか書いてみたけれど馬鹿馬鹿しいので削除してしまいました(笑)まあ言っておきたいのは、作品の良し悪しといった議論でなく、好き嫌いの判断ですらなく、単なる大前提みたいなところでネチネチ空疎な持論を唱えてるこういう大人は、反面教師としての役割を終えたらとっとと消えてほしいという事ぐらいです(←なんだか友人の某・渋谷K一郎みたいな口ぶりになってきた)


えーと何の話だったかな?そうそう、そんなわけでライヴが終わり、メディアホールで撤収&片付け作業。ようやく全て終わり、演奏者の引き払った楽屋にスタッフを集め、このために遅刻してまで買っておいた(笑)発泡ワインで軽く乾杯。反省会は大事だからね。たとえまだ午後の日の高い時間であろうとも…


その後はさらに別のコンサートやら100人以上参加の超ド級打上げ…じゃない、懇親会があったりして、いや今日も濃い1日でした。最後はまたアリマ、そしてこれまたずいぶん久々な三輪眞弘さん(2人とも当方にとって実はかつてのバンド仲間という共通点あり)と、よもやま話しながら電車で帰宅。

VAC FINAL2007

WONO2007-12-14


オーバーワークでオーバーフローでオーバードライヴな今週のあれこれもいよいよ佳境に…。


まずは朝7時台に家を出て、今日から始まるインカレのパフォーマンス会場である多摩美メディアホールに向かう。設営自体は学生たちが着々とこなしているので、当方はディティールをチェックして結線を軽く変更したり、軽くアドバイスしたりする程度。実際のPAオペは、もはや我が研究室のサウンドシステムを熟知しつつある学生のセキくんに任せっぱなし。リハーサルが始まってしばらくしたあたりで、2限の授業のため現場を離れる。


その科目『映像メディア論』、本日は今年の最終回ということで学年末試験だ。試験と言っても当方の行う形式は、これまでの授業で扱った映像を複数見せ、それらに関して論述させるというもの。何を資料にしようと、教室外のどこで書こうと完全に自由。という、数年来の経験から編み出した一見めちゃ自由なようで案外ハードな形式である。こちとら毎回チマチマ出席とる根気はないが、毎回熱心に授業を聞いていた学生ならハハァあの話だなと気づいてくれるようなネタ…いや主題を問いにしたつもり。


で、すかさずメディアホールに戻り、残りのリハにつきあう。オブザーバーというかいざという時のトラブル・シューターのつもりで待機していたのだが、意外なほど何のトラブルも起こらず一安心。あとは本番を待つばかりとなる。


だがその本番は、我が情報デザイン学科VACクラスの最終ミッション、コードネーム“VAC FINAL”として行われる映像パフォーマンス公演『T-TALK』とちょうど同じ時間の開催になってしまった。立場上、当方は当然その公演の方を観に行かなければならない。


この公演は要するに「個人の映像作品を制作する」のと「その展示を集団で実施する」という両方をいかに矛盾なく融合させるかというお題で、学生たちが自由に企画する学期末課題。スタティックなインスタレーションとダイナミックなパフォーマンスの中間の様々な形式で、これまでも毎年度の学生たちは様々な手法にトライし続けてきた。


こちらの目標としては、それぞれの個人に1年間の総決算となる映像を制作してもらいたいというカリキュラム上の意図と、同時に、最後なんだからパーッと皆でイベントやって盛り上がっちまえよ!というグルーヴ原理主義的なノリの両方を無理やり詰め込んだ、恒例のミッションなのである。


今年は、大スクリーンによる個人作品の上映と、マルチモニターを使ったグループ映像が交互に展開されるという、やや映像インスタレーション寄りのヒネッた構成で始まりながらも、進行につれて合間に挿入される生身のパフォーマンスの存在感が大きくなっていき、最後は全員が出演して場内を練り歩き、演じ、叫び、カオティックなクライマックスを迎えるという、なかなかにドラマティックな構成演出。


そんな内容もさることながら。このクラス、途中でいわゆる中だるみというか出席の減った時期などもあったり、実は個人的に問題や悩みを抱えた学生もいたりしたんだけど、最終ステージの本日、4月の開始時と同じ22人が再び集合して全員で公演を成し遂げてくれたってところに、何よりも一番じーんときてしまった。予定調和と笑わば笑え。色々あったけど最後は芸術の力に救われるってストーリー(まるでフェリーニ8 1/2』のラストだな)弱いのよ当方。


終演後は軽く講師陣からのコメント、そしてすかさず彼らは撤収作業に入る。当方は再びメディアホールに帰還。残りの演目を見届けてから、再びVAC側に戻って今度は打ち上げに乱入…という、マルチタスクというかてんやわんやな1日であった。


と言いつつも合間には、来校していた盟友アリマ(昨年の「インカレ」オーガナイザーでもある)と久々にゆっくり話もできたりして、いやに充実した1日でもあったのだが。盛り上がりすぎて帰路、危うく終電を逃しそうになったのだけは想定外だったけど…




写真は東京工芸大「[b] Laptop orchestra」
これまた「ラップトップバトル」以上のフィジカル・コンピューティング。ノートパソコンを殴ったりこすったり削ったりして音を出すというベンディング最右翼(本番の演奏、観たかったなー…)