静寂とノイズ

WONO2007-11-25


さて今週はこんなイベント…いや授業を、主宰します。




大友良英 特別講義
サウンドトラック論 静寂とノイズ」

主催:共通教育「音響構成論ゼミ」(企画/司会 ヲノサトル)
2007年11月28日 16時20分 〜 18時10分
多摩美術大学 八王子キャンパス (東京都八王子市鑓水2-1723) レクチャーホールA


日本の音響シーンを代表する音楽家演奏家大友良英。この講義では、これまで手がけた映画音楽を題材として、映像・音・空間について大いに語っていただきます。映像&サウンド制作者必見!


大友良英 公式ブログ「大友良英のJAMJAM日記」


大友さんと初めてお会いしたのは20代後半の頃だったと思う。


当時の当方は、「サンプリング・コラージュ」を自分のテーマと決めこんで、サンプラーやコンピュータ、CDプレイヤー等を用いて演奏活動をチョロチョロと行っていた。そんな折り、「レコードを使って暴力的なまでに既成音源をコラージュしていく”ターンテーブル奏者”=大友良英」の存在を知った時は「これだ!」と思わず膝を打ったものだ。


パソコン通信を通じて知り合っていた巻上公一さん*1との共演でライヴがあると聞きつけ、小田原まで観に行って、終演後巻上さんに紹介していただいたのが当方の初大友体験だったと記憶している(今や記憶も定かではないので、ひょっとしたら別のライヴと勘違いしているかもしれないが…)


その後の当方は大友さんを心中ひそかに「ターンテーブルの師匠」と決めつけ(大それた話であるが、当方すぐに感動しては人を勝手に師匠と決めつける癖がある。ちなみにキーボードの師匠は富樫春生さん)自分もターンテーブルを購入し、古本屋の隅に眠っているムード音楽の中古盤などをディグしてはライヴでスクラッチ…といった芸風に転向。その後、光栄にも大友さん率いるサンプリング・オーケストラ(?)の一員として、Sachiko Mさん(当時は別名だったけど)や角田亜人さんらと共に、演劇の公演で生ライヴしたり、新宿ピットインに出演したりした記憶がある。


大友さんがその後「いわゆるサンプリング・コラージュ」的な音楽から「いわゆる音響/ディープリスニング/アブストラクト」的な表現へと大きくスタイルを変化させていったのは周知の通り。当方もまた、明和電機にスカウトされてオルガン弾きを始め、ポップスのアルバムを作ってみたり、実験的なノイズ音楽からダンスミュージックのクラブDJへと活動をシフトさせたりと、身辺がいささかあわただしくなっていった。


そのうえ21世紀に入ってからは家庭の事情もあって、やむをえない仕事以外の外出ができなくなり、夜遊びはおろか、他人様のライヴを聴きに行く事もほとんど無くなってしまった。したがって「転向後」の大友さんのライヴは一つも観ておらずCDや音源から推察するばかりなのだが、深くシリアスな探求を一貫して続けておられる点、常にリスペクトし続けてきたつもりだ。生粋の大友ファンに言わせれば全然ジャンルも違うこんな軽薄な男が?という感じかもしれないけれど、当方にとっては今でも「心の師匠」なのである。


…と…、私情はともかく。
今週の講義は、そんな偉大なコンポーザー=プレイヤー大友良英さんの、しかしあえて「映画音楽」作家としての面にフォーカスしたところが値打ちではないかと自負している。これまであまり具体的に批評/言及されてこなかったように思うが、大友さんのサウンドトラック仕事には、近年彼が追求している音響、聴取、空間といった問題が濃厚に反映されている…というか同じ問題意識を違ったメディアで展開している、ように思われるのだ。今回は、そこのあたりをぜひ伺ってみたいのである。(←やっぱり私情だ)


えーとそれで、専任教員としては微妙な言い回しせざるをえないのがいわゆる「モグリ」聴講の問題なのですが、外部からたまたま多摩美のキャンパスを「見学」に訪れ、たまたま入ったホールでこの講義を目撃してしまう方がいらしても、何の問題もないのではないのではないでしょうか。というか、ぜひそんな「偶然」が多発してほしいとむしろ願っておりますので。そこんとこよろしく。

*1:なにせインターネット普及前のことである。当時は特定のサーバを拠点とするBBS、掲示板システムが主流だった。中でもコンピュータ音楽についての専門的な掲示板として発足した「コンミュ・テレプレゼンス・ラボ」は、巻上公一さん、三輪眞弘さん、赤松正行さん、佐近田展康さん、細馬宏通さん…等々、錚々たるメンバーがそろってはMIDI通信プロトコルだプログラミングだ…とコアな話題を展開していた。レクリプの3人も参加。