特別講義の顛末

WONO2007-11-28



昼から早めに多摩美入りして、大友良英さんの特別講義『サウンドトラック論 静寂とノイズ』の準備を始める。


どうせならショーアップしたいのでKEYNOTEでオープニング映像を仕込んだり、音源や映像ソースの接続にミキサーやら何やら配線したり。会場となるホールは直前まで別の授業に使われているため、終了後すかさず機材を接続準備しなければなえらない。というプレッシャーもあって、ドタバタとライヴ前のようなあわただしさ。


10年以上ぶりの対面とあって当方いささか緊張してたが、再会してみればあの気さくな大友さんのままで、安心した。やっている音楽のシリアスさや、ブログなどでの硬派な筆致から、「こわい人」「近寄り難い人」「寡黙なアーティスト」…みたいな印象が強いようだが(学生のほとんどはそう思ってたみたい)実はめちゃめちゃ温かく、おやじギャグすら飛ばす人なのである。どちらかと言うと「天然ボケ」だったりも(以下自粛・笑)


そして、よくしゃべる! 講義はあっという間に終わってしまった。サウンドトラックを担当した映画『風花』(ロードムービーの名作!)のファーストシーンの音だけをテーマに、1時間しゃべりたおしてくれました。


「音だけ」と言っても、そこに実はどれだけの情報が詰まっているか。どれだけの仕事が成されているのか。カメラを持てば映像は撮れるし、パソコンに素材を貼りつけてループされば音楽なんてチョチョイと作れちゃう。そんな時代だからこそ、どれだけ「その先」に行けるか、どれだけ掘り下げられるか濃密な時間をすごせるかという、仕事の深さが問われているのだ今や。…といった「プロフェッショナルの流儀」が学生の皆さんに伝わったとしたら幸いである。


そして後半は学生からの質問に答えていただくコーナー。当方とのトークショー形式で、作曲に関する深い質問から、下世話な食べ物の話まで(笑)大いに脱線しつつ盛り上がる。生ギターを抱えて実際の音で説明したりする場面も(いいなあギタリストは!)


ネタばらしをしてしまうと、こうしたゲスト対談のとき当方の念頭にある原イメージは、実はTV番組『アクターズ・スタジオ・インタビュー』。(ぜんぜん違うじゃねえか!と言われそうですが、あくまで原イメージってことで)プロフェッショナルな映画人たちが、しかしセレブとしてではなく、ものをつくる職人として、同じ道をこれから歩く後輩たちに向かって率直かつ誠実に話をする。というこの番組の雰囲気が好きなのです。もちろん当方の司会などジェームズ・リプトンの名ホストぶりには遠くおよびませんが…


終了後は当然、打ち上げに。ユリイカやブログを通して大友さんの打上げ好きはもはや常識、いや伝説にまでなっていますが(笑)実際、一滴もアルコール飲まずによくもここまで…というぐらい盛り上がっていただきました。勉強にしろ宴会にしろ、ああしろこうしろ口で言うより、実際にやってる「スゴい人」を目のあたりにするってのが、結局はいちばんの教育なのだなあ。とつくづく感じ入った次第。


昨年同じ枠で来ていただいた渋谷慶一郎氏も学生たちに相当な感銘を与えていたみたいだけど(特にその毒舌・笑)考えてみればミュージシャンやアーティストといった「プロフェッショナル」って我々のような大人からすれば現場でいつも会ってるフツーの人にすぎないんだけど、学生にしてみればそりゃあもうミステリアスな「未知の人種」なんだよね。そんな当り前の事を再認識させられるから学校ってやっぱ面白い場所だ、われわれ「大人」にとっても。


写真は、お土産にいただいた大友さんの新譜『INVISIBLE SONGS/SORA』思いっきりギターロックの歌モノで、のけぞりました(笑)フツーにかっこいいじゃん!!!