アフリカの夢

WONO2007-11-16


多摩美客員教授伊藤俊治さんのレクチャー「原始の冒険/闇の奥から」を拝聴。


ここ数年は酒席でご一緒してばかりの伊藤さんだが、学生時代めちゃめちゃ読んでたフェティシズム関連の(と括るのも失礼な話だが)一連の本の著者。それが今や同僚!(格の違いはさておき)と思うとなんとも不思議な気分だ(これは、ミュージシャンになってから、かつてリスナーとして聴いていた音楽家と共演したり対バンになったりする時の感覚に似ている)


しかし今日は珍しく一介のオーディエンスとして話を聴く。テーマはポストコロニアルアートとプリミティヴィズム。という事で、パリのケ・ブランリー原始美術館から森美術館のアフリカン・リミックス展、ジョゼフ・コンラッド『闇の奥』、レヴィ・ストロース、民族儀礼の記録映像…と、アフリカの呪術的世界を中心に話が尽きない。いつしかこちらも闇の奥へと魂の旅に誘われる始末…


名人の落語を聴いてるような感じで、眠気とも覚醒ともつかぬ不思議な精神状態に陥る絶妙な語り口であった。多摩美大広しと言えどもアフリカ美術に関する講義なんてないのだから(ないですよね?)油画とか彫刻とか、ファインアート系の学生には聴講必修とするべき内容ですな、これは。


印象に残ったのは「人類の起源はアフリカにあると言われている。ならばアフリカのアートには、言わばDNAに託された遺伝子情報のように、始源から未来まで人類史の全情報が織り込まれているのではないか。未来のアートへのヒントもアフリカにあるのではないか…」という説。美術のみならず、音楽にもまさしく言える事かもしれない。グルーヴの遺伝子とその未来形が、アフリカ音楽の中に全て織り込まれている、という甘美な想像。