名は体を表す


今日はひっさびさにリットーミュージック社を訪ねて、『キーボード・マガジン』で始める新連載の打ち合わせ。またしてもで恐縮ですが、作曲法をああだこうだ語るセミナーです。


淡々と作曲理論を語ってもアレなので、古今東西の名曲を実例にとって理論を証明し作曲法を講釈するスタイルにしようかという話に。『甘い作曲講座』が演繹法の作曲講座だとしたら、今度は帰納法だ!理論を証明するのは歴史だ!温故知新!とかなんとか、例によってその場の思いつきでベシャりまくってきました。


しかし難しいのがタイトル。「猫に名前をつけるのは難しい…」とうたった詩人がいましたけど、何であれ名前をつける作業てぇのはいちばん難しい。もちろん、いちばん愉しくもあるのですが。(そういえば息子の名前を考えるのも夫婦ふたりでギリギリまで悩んだ記憶が…)編集者2名と延々ブレスト。




「さて。タイトルどうします?」
「『古今東西の名曲に学ぶ作曲法』…」
「長い。『古今東西』ってのも古くさいし」
「同じ4文字で『満漢全席』」
「料理セミナーじゃないんだから」
「なんか麻雀の新しい役?みたいな?」
「4文字… 『作曲国宝』ってのは?」
「…なんか邦楽の特集みたいですね」
「じゃ『作曲世界遺産』」
「そんなもの認定しちゃって良いんですかね」
「『作曲勲一等』」
「また邦楽だ」
「『作曲の殿堂』」
「それだと楽曲じゃなくて作曲家がテーマみたいですね」
「もっと現代的な路線で…」
エコロジーは?」
「過去の楽曲をリサイクルするって意味では、確かにエコロジーですよね」
「『エコな作曲』」
「『ロハスな作曲』」
「なんか電気とか使わなそうですね」
「電子楽器なんか全然使わない作曲ね!」
「うち『キーボードマガジン』なんですけど……」
「……」
「……じゃ、じゃあ、もうちょっとコンピュータなんかもアリって感じの作曲で行きましょうよ」
「『作曲2.0』」
「意味わからないよ!ってか既に死語だよ!2.0。」
「アルファベットつながりで『i 〜』ってのはどうですかね」
「『i tunes』みたいな?」
「『i composition』とか」
「長い!」
「略して『i コンポ』」
「時代遅れの家電みたいだな」
「ベストセラーのタイトルとか、参考になりませんか」
「『作曲化する社会』」
「社会を語ってどうするんですか!」
「『作曲の品格』」
「固すぎる」
「『美しい作曲へ』」
「クラシックに偏りそう」
「疑問符系は?『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』みたいな」
「『作曲家はなぜ作曲するのか?』」
「なぜ作曲するんでしょうね…」
「………」
(3分経過)
「………………って、そこまで本質に迫らなくても!」
「もっと現実的にいきましょう」
「じゃあ『金持ち作曲、貧乏作曲』ってのは」
「現実的すぎます」
「『不都合な作曲』、あっ『ふぞろいの作曲』は?」
「それじゃ暴露本ですよ」
「うーん……『作曲の壁』」
「却下」
「『作曲男』」
「却下」
「『今週、妻が作曲します』」
「却下」
「『世界の中心で作曲を…」
「却下!」




…さっそく来月号からでも始めますか?と提案されたものの、この調子なのでもう1ヶ月先にのばしてもらった。さてどんな連載になるのでしょうか。