理屈は後からついてくる


夕方、パパスカフェ『甘い作曲講座』担当エディターの山口さんと打ち合わせ。彼はこのジャーナルで激賞した『レコード・バイヤーズ・ダイアリー』の編集者でもある。


とりあえず『甘作』めでたく重版の知らせ。(買って下さった全ての方にこの場を借りて厚く御礼を申しあげます。おかげさまで息長く売れ続けております…)そして昨年発売になっていたこの本の韓国版、実物を手渡された。


うーむ…。イラストに添えられた書き文字や何やら、全てハングルに翻訳されているのが何とも新鮮。ただし当方、一文字たりとも読めないので、どう訳されてるのかとか全くわからないけど。とりあえず自分の名前のハングル表記がこれでわかるな。いつの日か訪韓のチャンスに備えておぼえておこうと思う(例によって思うだけで終わりそうだが)


さて今日の打ち合わせは、そろそろ新しい本つくりたいよねというわけでネタ出し会議。何も考えずぷらっと出向いたのだが、気心知れた山口さんと談論風発、盛り上がっているとその中からフッとアイディアが出てくるから打ち合わせって奴ぁ面白い。メールのやり取りじゃこうはいかないよね。盛り上がりついでに、帯にうってつけのものすごい名コピーまで決まったのだが、あまりに素晴らしすぎてもったいないので秘密(吝嗇)。


話者が面白い内容をあらかじめ考えているから席が盛り上がるのではなく、席が盛り上がるから結果的に面白い内容が「ついてくる」のだということは、あらゆる会合に共通する真実。(だから、実りある結論が欲しければ、イイ雰囲気で座が盛り上がる事を何よりも優先すべきなのだ)


そういえば学生時代の恩師(たいへんしばしば酒をおごって下さった大恩人)である作曲家、金田潮兒先生の口ぐせに「理屈は後からついてくる」というのがあった。


学生が作曲作品を持ちこんで、ここはどういう音組織で、こっちはどういう構造で…などとぐちぐち言ってると「大丈夫!理屈は後からついてきますから!」の一言。何の根拠もなくそう言われると、こちらも「あ…そうスか?じゃ、まぁ良いか…」となぜか納得してしまう。「よし解決。じゃ、とりあえず移動しましょう」と先生に言われ、何が「とりあえず」なんだか疑問を持つ暇もなく、徒弟一同ずるずると酒場に平行移動。


酔っぱらった我々はそこでも「そもそも作曲とは…」なんて小理屈をこね始めるわけだが、そんな時も先生は「大丈夫、大丈夫! 理屈は後からついてくるから! とりあえず飲んで飲んで!」こちらも「あ…そうスね?じゃぁとりあえず…」なんて、何が「とりあえず」なんだか疑問を持つ暇もなく、ゴキュゴキュッとビールを流しこむ。


こういういいかげん味のある先生こそ、大学の財産ではないかと思います。いやマジで! (当方なんぞ、青い青い。)


えーと思い出話に飛んでしまったけど、そういうわけで今日の打ち合わせでは最終的に、音楽家向けのHow To本でありながらリスナー向けの読み物でもあり得るような2つの案がまとまった。


編集者に「いいスね!こういう本、僕も読んでみたいですよ!」なんて言われると、なんだかとてつもなく面白い本が書けそうな気になってくる(しっかり編集者の手のひらでころがされてます)おだてに弱い当方です。ま、編集会議で通るかどうかは、採算性とか「大人の事情」も色々からむので何とも言えませんが。実現すると良いなぁ。