野獣会と部活


本年度IMIの初ワークショップ。羽田から大阪伊丹空港へ飛ぶ。


「ワークショップ」という名目ではあるが、サウンド講座全体の初授業なので、講座の方向性について解説する「ガイダンス」と、テーマについて講義する「レクチャー」と、履修者が提出した作品を試聴し話を聞く「ワークショップ」が混じったような、怒濤の展開。


レクチャーのテーマは「コンポジションについて」。拡大コピーした年表をホワイトボードに貼りつけて、補助線を引きまくりながらギリシャローマ時代から21世紀まで一気に「作曲」の歴史をたどる。


宗教音楽が芸術音楽や世俗音楽に枝分かれしていくプロセス。
グレゴリオ聖歌のようなモノフォニー音楽がポリフォニーを経て、メロディ+伴奏という現代のポップソング形態に至るプロセス。
楽器の進化が演奏家と作曲家や指揮者の分離を進めていったプロセス。
聖歌のネウマ譜が定量記譜や五線譜を経て図形楽譜や文章譜にまで変化していったプロセス。


…などといった「歴史の縦軸」が、同時代という「横軸」においても緊密に関係し合っていて、しかもそれはルネサンスとかロマン主義とか産業革命といった社会状況や思想に大きく影響を受け、メディアやテクノロジーの発達と深い関係があるのだ。と書いていても目眩がしてくる壮大な内容を2時間で語るというのだから、壮大というか、まあ無茶な話ではある。


終了後は新大阪に移動して、顔合わせの宴。 かつて「千里野獣会」を標榜して、授業が終わるたびに共に飲み狂ったOBも数名、参加。例によって「部活」の話で盛り上がる。


月に1度あるかないかのワークショップで「部活」もないものだが、これはスピリチュアルな、いやコンセプチュアルな部活なのだから良いのだ。活動内容は、こうした宴会のたびに「どういう部であるべきか」を語りあうだけ。実にアブストラクトな部だ。言わば絶対零度の部活である(意味不明なのが酔ってる証拠)。


中でも最も人気のある部は「略語部」で、これは要するに勝手な略称を考える部である。関東では「ケンタ」と呼ばれるKFCが関西では「ケンチキ」、「マック」が「マクド」と言うのは有名な話。略語は一つとは限らない。


何であれ、略し方しだいでイメージも変わるのではないか。固定化し形骸化した凡庸な略称に鉄槌を下し、常識に風穴を開けるアーティスティックな言語実験、それが「略語部」なのだ!(と声が大きくなるあたりが酔ってる証拠)


Macintoshが「トッシュ」でWindowsが「ドーズ」。ってのは当ジャーナルでも何度も書いてきた。PowerBookは「パブ」で、iBookが「アイブ」(愛撫?)。当方が担当する「サウンドデザイン講座」は「サドンコ」。東海道新幹線は「トドカン」(届かん?) 。ワールドカップは「ワップ」(語尾上げするとストリートっぽい)……






馬鹿である。