DJ寿司


連休前にとりあえず各授業、初回をこなし終えた。どの科目も既に良いグルーヴ感。


大学の授業って言っても「講義」と「ゼミ」では全くスタンスが違う。以下は、とりあえず講義について、数年の経験を経た自分なりのアティテュード。ここを読んでいる学生には手の内を明かすことになるけど(苦笑)


講義の場合、1対多のプレゼンテーションということになる。ここでは、ドカンとつかんで要所要所に印象的な場面があった後に余韻を持って終わる…的なストーリーテリングが非常に重要。という意味でこれはパフォーマンス。演劇的ならざるをえない。


伝達内容がいかに優れていようと「伝達」されなかったら意味がないわけで、ではどうすれば、眠いめんどくさいかったるいメールが気になる腹がへった…といくらでも散漫になり得るお客さん学生に効果的に「伝達」できるかというと、そこにはやはり策略が必要なわけだ。まして伝達内容がたいしたことない当方の場合は(僻笑)非常に必要。


飛び道具としてのキラーコンテンツ。これは重要。これを出せば絶対ウケるぞ喰いつくぞというネタ。たとえばCM映像の授業では、90年代の武富士ダンスとか80年代の武田鉄矢による公共広告とか(あるんですそんなのが)、海外ものではジョン・ウーが監督したナイキの空港サッカーとかバドワイザーの「ワザー!」シリーズとか。300人中280人がウケてくれると最初からわかってるネタ。空気がヌルかったら、こういうものを小出しにする。


しかし大ネタばかり見せつけても次第に鮮度は落ち、単にミーハーで節操のないセレクターに思われて、フロアがそっぽを向く… このあたりの構図はDJプレイに似ている。


重要なのはネタそのものではなく、それを的確に配した一晩全体1コマ全体のデザインなのだ。そう言えば、ウケ狙いの一発モノよりも案外、知的に「深い」ネタや、現実社会の時事に即した「旬な」ネタのほうが、私語も止み、急にシーンとなってフロア教室の温度がガッと上がってくるのも、よく体験することだ。


みんなが知ってるアンセムでアゲアゲに踊らせる予定調和な盛り上げは簡単だが、そうではなく、たぶん誰もまだ知らないけど絶対いいトラックだからこれ!ってノリで、いちおしの新曲を回す。一瞬「え?」って感じで今まで踊っていたオーディエンスがとまどうのがわかる。バーやラウンジでチルってた「浮動票」のお客さんからも「お、なにこれ?」って検索の視線が飛んでくる。やにわに、号令をかけたわけでもないのに、わらわらとフロアに人が集まってくる。DJ冥利につきる瞬間だ。


結局、大脳新皮質を刺激する知的情報にしろ大脳視床下部を刺激するグルーヴ情報にしろ(←部位はテキトーです信じないように)その情報が自分に快楽を与えてくれるかどうか、人は秒速で判断しているということ。そりゃあそうだ。たとえば寿司屋に行ったって、客として身銭切ってツケ台の前に座ってる時にゃ、職人さんがきちんと「仕事」してあるかどうかぐらいのこと、舌にネタ乗せた瞬間にわかるものな。


というわけで今日の結論。人生に必要なことはすべて寿司屋で学べる。(←どうしてそういうことになるのか)


というわけで学生の皆さん当方の講義がヌルかった日は徹夜明けで思いっきり死んでるか単に仕事してねえか(準備不足)だと思ってあきらめてください。