「Sonic Acts」

WONO2006-02-11


"Sonic Acts XI - The Anthology of Computer Art" (THE WIRE Feb2006 付録)

渋東に隠遁して以来、書店やレコ屋を流す頻度は激減。その分、通販や雑誌の配送を利用する機会が増えている今日この頃。先月届いたイギリスの音楽雑誌THE WIRE(現在発売中)が最高でした。電子オーディオ/ビジュアル関係に興味ある方は、絶対に買い!


付録にディスクがついてたので、またCDかと思ってたら(この雑誌、よくコンピCDつけてくれるのでイイ勉強になります)今回はなんとDVD。しかも両面。裏返してインサートすると別サイドとして機能するという仕組みは初めて見たな。A/B面つかって合計37トラックものミュージックビデオが収録されている贅沢な「付録」ですこれは。


ほとんどは、いわゆるグリッチエレクトロニカ系のサウンド+抽象映像という組み合わせで、当然のように中身は玉石混淆なのだが、この手のビジュアルをこれほどまとめて観られる機会はなかなかないので。もっとも、これらの多くはいわゆるミュージッククリップとは違って、基本的に1アイディアで最初から最後まで通すものが多く、ミュージックビデオというよりは短編実験映像と呼ぶべきかもしれない。


おすすめをいくつか挙げておくと、映像の美しさでは、音のパラメータをリアルタイムに変換して抽象映像が蠢くアルヴァ・ノト+坂本龍一『BERLIN』。デスクトップで発生するデジタルデータを素材にした作品が多かった中、あえて実写による具象映像を素材にして、それが「故障」していくプロセスを見せてくれるreMIの『B_left_T00_sonicDC』。ウェブブラウザにアドレスを打ち込んでいくとそれがサウンドに変換されていく…という画面そのものを撮影してみせるPeter Luining『ZNC browser 2.0』あたりが、気に入った。


しかしアルヴァ・ノトの「音に反応して暗闇で光の円が大きさを変える」ってアイディア、どこかで見た記憶があると思ったら、90年代に日本のvoyager社から出た『ニルヴァーナ・エンジン』というインタラクティヴなアプリケーションにそっくりなんだな。もちろん盗作ということではなくて、つくった人が知らなかっただけだと思うけど。しかし90年代って、物語性を排除した徹底して機能主義的なサウンドとビジュアルの同期が流行し始めた時代だったなー(その代表は「ビデオ・ドラッグ」あたりか?)なんて連想から先ごろ亡くなったナム・ジュン・パイクの話題に移るのは、またこんど。


今回の結論としては、音楽のかっこよいものが映像も良く見えたってとこです。逆はなかったけど。


と書いたら、書店で売られているWIRE誌(FEBURARY ISSUE)にはこのDVDが付属していないというメールをいただきました。調べてみたら通販購読のみのサービス付録とのこと。どうしても欲しい人は今から購読開始するしかないかと…(これ系の音が好きな人は、ま、購読して損はない雑誌ではあります。ちょくちょく付録CDもつくし)


このDVDの内容はこちら


このDVD、実はアムステルダムの音楽フェスティバル「SONIC ACTS」が編纂したアンソロジー。ちなみに今年の「SONIC ACTS 2006」は2月23-26日開催。コンサート、上映、展示、コンファレンスなど盛りだくさんな内容。イベントの詳細はこちらをどうぞ。(って、なんで僕が宣伝してるんだ?)