いつのまにか次の季節なのだ

WONO2007-11-01



近所のスーパーで秋刀魚を買い求め、家で焼く。という夕食に最近こっている。だいいち細かいメニューなど何も考える必要がないところが良い。焼くだけだからね。今日も鮮魚売り場では1尾150円だ。これでいこう!


売り場の魚ケース前に立ち、氷漬けにされた秋刀魚たちを眺める。いい景色だ。あの香ばしい焦げ味を想像するだけで、もう酒が飲みたくなる。まずは肉厚の背中を皮ごとかじり、それから、グビッと酒(常温)を口に放りこんでおいて、ちょっとだけ箸につけたハラワタをなめる。ふわりと口中に広がるホロ苦さはまさしく磯の香り…と売り場に立ってウットリしていたら「イカ食べる!イカイカ!」と息子が店内に響き渡る大声で主張を始めたのでハッと我に返り、あわてて隣のスルメイカもカゴに放り込む。こちらも1パイ150円。旬の素材は何にせよ、安くて良い。夢芝居はともかく、早く帰って料理。料理。


秋刀魚を焼く。


両面に軽く塩をふったら、あとは強火の遠火でひたすら焼くだけだ。窓を全開にして換気扇をフル回転させても、部屋の中はもうもうたる煙で真っ白になるが、こればかりは仕方ない。皮までこんがりと焼き上がったら、たっぷりの大根おろしを添え、カボスを絞って、さあ「いただきまーす!」


…と、妻が一言ボソッと「身が固くなったね」。


確かに固い!


つい数日前まであれほどジューシーでホクホクして美味だった秋刀魚のボディが、何かこう、干したアジのように、良く言えば「筋肉質」な感じに、様変わりしてしまっていたのだ。ふと気づいたら、そうか、今日からもう11月ではないか…。


「時間というものははかないものですね…」と横山剣さんも歌っているが、「旬」とはかくも短い期間だったのか。うーん。光陰矢のごとし。覆水盆に帰らず。芸術は長し人生は短し。えーとえーと…ことわざはどうでもいいが、今まで漫然と食してきた秋刀魚なのに、いわば定点観測のように続けて食べていた今年は「旬を過ぎると味は確実に落ちる」という実に当たり前の事を身にしみて体験したというわけ。だいたい食べ物の旬なんて本で読んだりしてもさっぱり記憶に残らない人間なのですが、こればかりは一生忘れないだろう(何を大げさな)。


というわけで、うちの家訓。
秋刀魚は10月までとする!