角川とばしすぎ

先日、大阪からの新幹線車中でヒマつぶしに買った新刊マンガ雑誌コミックチャージ」が思わぬ拾いものであった。誌面についてはふれない。問題は付録だ。この雑誌、角川書店初の青年コミック誌ということで創刊記念の付録DVDがなんと「これまでの角川映画全93作品の予告編!」というド肝を抜くものであった。


角川映画と言えば今どきの若いもんは『男たちの大和』ぐらいしか知らないだろうか?当方は完全にカドカワ世代。予告編を観てみたら70年代後半から80年代にかけての角川映画、ほとんど観てた事がわかった。


犬神家の一族』『人間の証明』『野性の証明』と続く最初期のサウンドトラックを手がけるのは大野雄二先生!時代がかったアナログな色味の映像や、今ではすっかり流行らなくなった画面右側に縦に出る手書きの字幕、「お母さん、僕の麦わら帽子どこに行ったんでしょうね」だの「NEVER GIVE UP!」といった大仰な惹句、そしてそこに流れるのが、クロスオーバー・テイスト溢れる大野メロディ。予告編を眺めてるだけでも当時の空気が蘇ってきて、泣けるー。


角川映画はこの後も、井上堯之(『戦国自衛隊』)南佳孝(『スローなブギにしてくれ』)松任谷夫妻(『ねらわれた学園』)来生姉弟(『セーラー服と機関銃』)等々、いわゆる「シティ派」なポップ・テイストあふれる音楽を採用し続けた。全共闘時代の残滓、あるいは当時の言葉で言えば「ネクラ」な日本映画への固定観念を払拭した功績は大きい。


角川映画とは要するに「角川春樹映画」だと言って良いだろう。とりわけ初期のとんでもなくブッ飛んだ企画の数々は、ワンマン社長の決済でなくては到底作れなかったはず。草刈正雄が南米からワシントンまで歩く映画『復活の日』とか、松田優作室田日出男ロシアンルーレットで遊ぶ映画『野獣死すべし』とか、服部半蔵ソニー千葉)がなぜか自衛隊員として天下をとる映画『戦国自衛隊』とか… 後に角川氏が麻薬で逮捕されたと聞いたときも「あ、なるほどね」とむしろ納得したほど、常人の思考をブッちぎった企画が連発されていた。


というわけで映画ファンならとりあえず、資料価値ありすぎなこのDVDをゲットするためだけにでも絶対この雑誌を買っとくべき! 以上。