狂った

WONO2007-01-18


『狂った一頁』(衣笠貞之助監督・1926年日本映画)を、折にふれて観ている。


『アンダルシアの犬』『カリガリ博士』『人でなしの女』といった20世紀初頭ヨーロッパの実験映画に比較されて語られる事の多い「日本初のアバンギャルド映画」。よく名ざされるわりにはメジャーなDVD化もされておらず、観たことのある人も意外に少ない、これは「幻の無声映画」だ。


実はこの4月に出演するフランスのフェスティバルで、この映画を上映しながらライヴ演奏するという企画があるため、早速ネットで探しに探してブートDVDを入手してみたのだ。おそらくはビデオからの複写と思われ、画質はずいぶん荒いが、ナニ全体の進行とグルーヴがわかれば良いのさ。


全編、精神病院を舞台に幻想と現実が交錯する展開で、どことなく松本俊夫『ドグラ・マグラ』を思い出させる昭和レトロな雰囲気。光と影の強烈なコントラストはドイツ表現主義ふう。劇中で踊られる狂人のダンスはモダン…いやコンテンポラリーダンスか?なんとも味わい深いものがあります。単に前衛的なだけでなく、映像のそこかしこにキモノ、お祭り、翁やオカメのお面、といった記号としての「日本」も散りばめられているあたりが、欧米でもカルト的人気を誇る理由か?


しかし、この映画にインスパイアされた音楽家はずいぶん多いようで、これまでにもSUPER CHUNKやIn The Nursery、日本では板橋文夫さんやら千野秀一さん、はてはU.F.Oまで、様々な音楽家が、この作品を上演しながらのライヴにチャレンジしているようだ。さて当方はどんな音楽を考えるか…


遠回りではあるが、さしあたって無声映画音楽史に関する文献にあたるところから始めてみようと思う。(なにせ当方、リサーチ好きなもんで…)