トラックダウン


今夜は、アレンジャーとして参加している某女性ボーカリストのトラックダウン立ち会いで、目黒のマルニスタジオ。(公式サイトでもまだ発表されてないようなのでアーティスト名は伏せておきます。と言っても9月発売予定なのだが…宣伝は間に合うのでしょうか笑)


このスタジオ、『無問題2』サントラの時とか、CMのナマ録りとか、さらにさかのぼるとソロ『ビキニムーン』の録音(このアルバムではジャケット写真もここのソファに座って、常磐響さんに撮っていただいた)とか、何かと縁のある場所です。


しかしトラックダウン(以下TD)の立ち会いってのもずいぶん久しぶりだ。最近制作している音源は自分でTDまでやっちゃうし。というかプログラミングからTDで音バランス決めるところまで含めて"作曲"と考える種類の音楽だし。CMのレコーディングでは、録音まで終わったらTDはエンジニアとプロデューサーにお任せして帰るし。


録った音がエンジニアの魔術でがらりと変わる様子にニヤつきながら、「もうちょっとトランペットのバランスを下げて…」とか「2種類のシンバルの配置、右と左に振り切れませんかね?」なんてオーダーしたりしながら何度もプレイバックを聴く数時間。作業フロー上必要な単なるプロセスではなく、何種類もの言わば「リアルタイムなリミックス」を聴き比べることができる、実は贅沢かつ貴重な時間なのだ。


ポップスの世界では、作詞・作曲・編曲・演奏・プログラミング・録音・ミキシング・トラックダウン・マスタリングそしてそれらのディレクションやプロデュース…と、おそろしく細分化された分業体制によって工業製品のように楽曲を生産するのが常識。そこには時として弊害もあるものの、複数のプロフェッショナルの力を合わせることで初めて可能となる高度な技術や表現が存在するのも確かだ。という意味で、監督の名前を冠しながらも大勢のスタッフによって作られる「映画」のシステムに、これはよく似ている。


そういった「ハリウッド的」制作体制と、言わば個人映画のように全てを自分でコントロールする「インディペンデント系」制作体制。どちらが正しい、と決めつけるのではなくて、どちらも楽しい、というのが本音です。