ドナルド・フェイゲン

アマゾンで今ごろになって注文したドナルド・フェイゲン『モーフ・ザ・キャット』が届く。


それにしてもこの人ってぜんぜん変わらないよなぁとつぶやいたら、当方よりも全然フェイゲン好きの妻が「変わるわけがないでしょう」と笑っていた。 ま、それはそうだ。


例によって完璧な演奏、編曲、サウンドメイキング。非の打ちどころがないとはこういうことを言うのではないか。いわゆる「シングル向け」楽曲のような暑苦しさを一切排除した永遠の微熱感。アルバム全体を通して、ほとんど同じ1曲の変奏が延々と続いているかのような質感。それをキープする体力が人間離れしていてクラクラするほどだ。ある意味『アウトバーン』なみのミニマルさ。いつ終わったのか気づかない。あれ?終わってた?とまた頭に戻って延々ループする感じは、どこまで行っても延々おなじようなダイナーズとモーテルが続くだけの『パリ、テキサス』的なアメリカの街道風景か(憶測で言ってますけど)。フェイゲンが描き出す、平坦で単調で永遠に続くクールな空間で、しかし何かが確実に狂っていく感じ、ってのは、まさに僕たちが暮らすこの日常の「リアル」にほかならない。


ドナルド・フェイゲンと言えば、明和電機初代PAエンジニアのトクさんがサウンド・チェック用に常用していたのが『ナイト・フライ』の『I.G.Y』という曲で、「ンッチャッカ、ンッチャッカ(レゲエのリズム)……ドッドミ〜ソ〜ラ〜〜〜♪」というイントロのフレーズを聴くと今でも条件反射的に、明和のツクバ楽器が並んだほの暗いステージ風景と、さあこれからリハーサルが始まるぞという心地よい緊張感がフラッシュバックしてしまう。音楽の刷り込み効果って強力です。