THE PRODIGY「THEIR LAW」


PRODIGY "グレイテスト・ヒッツ [Limited Edition] "


付録DVDだけが目当てで買ったのですが、十分もとがとれました。ていうかおなかいっぱい!このバンドのサウンドカラー自体、過剰に詰め込んでギチギチにコンプかかったパンピン&ノイジーな音で、1曲でおなかいっぱいって感じを露悪的にやってるという印象なのですが、それがこれでもかこれでもかと詰め込まれてるベスト盤なんだからもう大変だ。血圧高めの方は心臓に悪影響を与える恐れがあります。逆に左脳使いすぎでストレスたまってる人間はこれを爆音で流しながら踊り狂うがいい!ただしカーステレオで聴くと確実に事故る。そんなオーバードーズな感じです。それにしても2枚組CD+DVD(PV集+ライヴ映像+PVのメイキング)って、ものすごい量だなー。値段を下げるのではなく、中身を思いっきり奮発する、という意味での価格破壊。なぜそこまでサービスするのかと(笑)


初期の一連のPVはロケーションに金かけず低予算で撮ったなというのがモロわかりながら、点滅する照明、広角や魚眼レンズを多用した歪み系の画面、粘着質で湿度の高いホラーな空気感、という実にイヤーな感じ(いい意味で)に的が絞れていて、たいへん好感が持てる。というか公開当時「ウワ、なんだこの連中?」みたいな嫌なもの見てしまったな感を与えてくれたことをあらためて思い出す、シンプルゆえに案外古くならない作風。


で、そのホラー風味というか露悪趣味の頂点は、授業でもよく教材に使わせていただいている「Smack My Bitch Up」。主人公?がクラブをハシゴしながら飲むわ打つわ吐くわ酔っぱらい運転するわ殴るわ壊すわ姦るわ最低なことをし続けるが、実は…とオチがちゃんとつく、ビザールな1品。(ここで観られます)全編に使われている主観カメラって手法は、映画の中で部分的には利用されるけど(会話シーンの切り返しショットなど)映画全体に利用して上手くいったためしがないと言われてる「呪われた技法」だが(映画史ではよく、探偵フィリップ・マーロウからの見た目で全編が構成された映画『湖中の女』1946 という“壮大な失敗作”が挙げられる)このPVでは、実に上手く(オチを生かす意味でも)使われていて最初みたとき大いに感心したものだ。ただし二日酔いの朝とか観ると過去の泥酔の記憶がフラッシュバックして死にたくなるので要注意。


もう一つドラマ?仕立てで面白いのが、ひたすら「目隠しチキンラン」の模様を見せる『Voo Doo People (Pendulum Mix)』目隠しした群衆がヨーイドン!で街を全力疾走。柱に激突して倒れる者、車にぶちハネられる者、樹木に衝突する者… 運良くゴールまで走り抜けられるのは誰か? というこれまた非常にイヤーな(いい意味で)作品。余談ですが、この「目隠しチキンラン」って、演劇のワークショップで実際にあるトレーニングらしいですね。恐怖心を振り切って精神と身体を解放するためのメソッドとして。(もちろん、ちゃんとアシスタントがスタンバイして危険がないように行なうわけですが)


で個人的に最も好きなのは、しがないサラリーマンおやじ3人が通勤してきてタイムカード押してから、楽屋でメイクして着替えると、それがプロディジー!というアホな始まり方の「BABY'S GOT A TEMPER」。着替えた3人がステージに出ていくとそこは遊園地の仮設舞台(日本で言うと子供相手の戦隊ものショーとかやりそうな)。観客はなぜか大量の牛たち。演奏が進むにつれ、無意味に露出度の高い巨乳女たちが登場してなぜか牛の乳しぼりを始める。場外スタンドにはそのミルクを購入するために人々が長い行列をつくっていて、買うなりその場でミルクをらっぱ飲みしては皆どんどんラリっていく。という、なんとなくDEVOの初期PVを思わせるシュールな作風。一体どこからこういう発想が出てくるのか(笑)完全に狂ってる!(しつこいようだが、いい意味で)


↑と思って調べたら「BABY'S GOT A TEMPER」のディレクターはTRAKTORでした! CMマニアなら誰もがご存知の、馬鹿CM界の巨匠ユニット。カンヌで賞をとった「世界の偽スポーツ」CMシリーズが特に有名。