4年前のクリスマス


鎗ヶ崎交差点の賑わいっぷりは、正月の原宿状態だ。


狭い歩道橋に人が鈴なりの様子は、神宮前花火の代々木公園歩道橋のようでもある。もちろん聖地・ハリウッドランチマーケットには長蛇の列。いいぞ、がんばれボーイズ。街を散歩し、流行りのショップをひやかし、カフェでカプチーノでも頼んで両手を暖め、心の中で財布の残りを気にしながらも、予算をちょっとだけオーバーする小さな洒落たアクセサリーを彼女へのプレゼントにセレクトし、毎年街に流れるおなじみのクリスマスソングにそれでもちょっと懐かしいようなわくわくするような興奮をおぼえて、先月から予約を入れてある一軒家レストランのドアを開け「さあどうぞ」とレディ・ファーストを気取って見せたりして。


相手がいたら絶対にそんな一日を過ごすのになぁ、とアパートでひとり空想しながらインスタントラーメンをすすっていた自分や、自分に恋をしていないとわかっている相手とそんな一日を過ごしては暗い部屋に帰って溜息をついていた自分を思い出すから、クリスマスってのはどうも切ない。自分にはそれが何だかわからないが他人と違った才能があるはずという根拠のない思い込みや、しかし世間も周りの誰も認めてくれないし、どうすれば認めてもらえるのかすらわからないというあせりや、とにかく漠然とした将来への不安で一杯だった頃の話だ。


ま、考えてみれば今でも状況はそれほど変わっていないかもしれないが(自由業と言えば聞こえは良いが、要は潜在的失業者なわけだしね)歳をとると何事にも「ま、いっか」と鈍感になる。クリスマスに憧れたりクリスマスを憎んだりしてた頃は、恋愛だってとてもじゃないが「ま、いっか」なんて言えなかった。だからがんばれ、ボーイズ。(もちろんゲイの君もね)クリスマスに関しては、僕は徹底的に「男の子」の味方だ。


2001年12月24日の『鎗ヶ崎ジャーナル』より