宇宙への電話線
女性雑誌の広告で「電話占い鑑定」という業種がある事を初めて知った。
かなりの数,出稿されている。営業品目に「透視」「霊視」「遠隔ヒーリング」「マインドリーディング」「サイキックアストロジー」などと聞き慣れない言葉が並ぶそれは、どうやら家にいながらにして電話で相談するだけで人生がバラ色に変わる夢の世界のようだ。いいじゃん、占い!
話すだけで、あらゆる厄を払っていただける先生です
「厄」とはまた古風な。しかも「話すだけ」で、とはまた…。
あなたの聞きたい事、言いたい事、すでにわかりますょ!
「すぐに」かと思ったら「すでに」かよ! 最後の小さい「ょ」ってのは何だ?
あなたの過去世、現在を透視し、彼の心や姿、行動は勿論!あなたの家の部屋模様まで視えるほどの透視力!
……あー、ねー。 …みえちゃうんだー。部屋模様まで…。
この他、
霊感で見るので生年月日はいりません
迷宮からの脱出をお手伝いします
宇宙とのかけ橋になり、貴女の運命を大きく変えます
貴女はどの色の幸福を選びますか?
絶対幸運波動、発信!
魂を揺さぶる鑑定
その鑑定は既に占という域を超えている
超えているって言われてもなあ。
……と、我々のような小市民の常識を百万光年彼方に抜き去った惹句の数々。思わず魂をグラグラと揺さぶられてしまうのは当方だけではあるまい。
当然、占ってくださる先生がたも凄い顔ぶれだ。
厳しいテストで真の能力者を集めてきた
業界トップクラスの占い師
神々から愛されしその力
天空よりの使者
鑑定ステージが高くトップクラスの先生
鑑定師という枠を越えたunusual ability比類なき能力の先生です
お母さんのおなかにいた頃を思い出させるような不思議な先生
これはもう予言者たちの戦国時代というか、この国にこれほどの能力者たちがひしめいているかと思うと、ちょっと慄然とせざるをえないではないか。『スキャナーズ』か?小松左京『エスパイ』か?(←古い…)お母さんのおなか先生は、ちょっと親しみやすそうだけど。
とは言え女性誌の広告だけあって、語り口は意外にソフトだ。
In the beginning I can't stop lovin' you
貴女に奇跡を、青い鳥をつかまえよう!
二人の未来はただ一つ。信じた方が勝つ。
全てを超えてゆく、愛と勇気。
(略)
Don't you worry! 心配御無用。
あなたには涙は似合わない。悲しみをエナジーに!
("Majestic" 宣伝文より)
J-POPの歌詞か?投稿ポエムか?なんとも香ばしい文体である。電話口でもこんなふうに語りかけてくるんだろうなー。「心配御無用! 信じた方が勝つのよ!」とか。でも何だろう?「勝ち」って。
で、このようにステージの高い内容が展開されている割には、どの広告も最終的には
鑑定料金 20分迄 4,200円 以降1分263円(税込)
振込先 ×××銀行 □□□支店 (各種クレジットカード可)
などと支払い関係だけは妙に細かかったりするところも素敵だ。一気に現実に引き戻されつつも、このまま天空とか宇宙とかに行きっぱなしか?という不安だけは、Don't you worry! 心配御無用なのであった。