YC-20


久々に楽器を購入した。1970年製のコンボオルガンYAMAHA YC-20。ネットで偶然発見したものの、ほとんど衝動買いの世界。


実は子どもの頃これが友だちの家にあって、放課後になると押しかけては弾かせてもらったり合奏したりして遊んでいた、懐かしの楽器なのだ。


子どもの頃読んだ本を大人になって再読すると全く違う印象だったりするように、あるいは子どもの頃遊んだ遊園地に大人になってから行ってみると全然別の感覚だったりするように、楽器というのも時代を経て触ってみると、意外な発見があって面白い。当時はチープなだけに感じられたトランジスタサウンドも、ラウンジDJやブラックベルベッツといった「価値観のコペルニクス的転換」を経た今となっては、最高に「使える」イカした音に聴こえるから不思議だ。


今回、横浜は関内のメッセ・デ・ミュージックで入手したのだが、お店の対応がなにしろ非常に好感度高く、ディスカウントにも応じてくれたりして(これは妻の電話交渉の功績だが)ホクホク気分。オーナーがミュージシャンだったらしく現役使用されていたため、ビンテージ楽器につきものの経年不良も最小限で、コンディション良好。息子と2人で炎天下はるばる駆けつけた甲斐は十分にあったという感じ。


ここは初めて行った店なのだが、ビンテージ機材が大量に並んだ薄暗い空間は、時間をかけてディグしたくなる「宝の山」感たっぷり。今回は子連れなのでネチネチ検分するわけにもいかず、残念!


だいたいが中古楽器店というのは中古車ディーラーと似たところがあって、店のキャラクターが濃厚なところほど掘り出し物があって面白い。イタリア車やフランス車にこだわるディーラーが「どうです、この車!ワンオーナーで大事に乗られていたらしく、年式が古い割にヤレ感も少ないでしょ? 大事に乗って下さる方を探していましてね…」などと語り出す口調と、今回のお店のようなヴィンテージ楽器店のそれは、酷似している。


商売の体裁を取ってはいるものの、要はそのモノがとにかく好きでたまらないのだなこの人は。と感じさせる店が、当方は好きだ。保険のセールスマンだろうと、学校の先生だろうと、ウェブデザイナーだろうと、世の中の職業人というものは「仕事だからやってる」人間と「好きで仕事やってる」人間の2種類しかいないのではないだろうか。どうせ買うのなら後者の店で買いたい、と思うのが人情である。


世の中「商売っ気のない人ほどなぜか商売が上手く行く」って話はよくきくが、その鍵は案外、このへんにあるのかもしれない。結局「愛」だよね、「愛」!