その根性が気にくわない


Q『ホワイトカラー・エグザンプションの導入に賛成ですか?』
A『訳の分からない英語を使って国民の判断力を無力化させる、その根性が気にくわない(東京、71歳男性)』


朝日新聞2007年1月27日版の記事『2624人が答えました』のコーナーに寄せられた様々なコメントのひとつなのだが、見れば見るほど味がある。「賛成?反対?」って問いに「その根性が気にくわない」って答えるノリが最高。さすがは年の功ですな!実はこれ、病床の妻がピックアップしておいてくれた記事なんだけど、身内ながらこういう目のつけどころは天才的…と賞賛しておきたい。


しかしまあ、無力化っていうか脱力せざるをえない「あんまりな外来語」ってのは、現政権だけの話ではなく、これまでにもさんざんお役所のやってきた事ではあるよね。『インキュベーション』とか。『エンフォースメント』とか。『クールビズ』とか(←あ、外来語じゃないか)。『E電』とか(←あ、これも外来語じゃないか。っていうか役所じゃないか…


とはいえ、このジャーナルで政治的な(政治的か?)主張してもしょうがないので、突然だが日本の「洋画」つまり輸入映画の世界に矛先を変えさせていただく。「訳の分からない英語を使って判断力を無力化させる」って意味ではお役所以上の業界だ。この話は前にもどこかで書いたが、何度強調してもしすぎることはないだろう。


なにしろ『ターミナル・ベロシティ』とか『ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン』とか『パイレーツ・オブ・カリビアン・デッドマンズ・チェスト』とかいった題名を見て「判断を無力化させられる」のは当方だけではあるまい。なぜ『カリブの海賊』でいけないのだろう?


新作では、たとえば原題が『CHILDREN OF MEN』なのに邦題が『トゥモロー・ワールド』ってのも、何か大人の事情があったのだろうか?TDLとのタイアップとか?(あれはトゥモローランドか)(とは言え映像的にものすごいトリッキーなんで、たぶんDVDが出たら教材として買いますけど)


しかしこれは、昔『上を向いて歩こう』を『スキヤキ』と超訳して売ったあちらの音楽業界みたいなもんで、付加価値としての「インポート感」をかもし出そうとした努力の結晶なのかもしれない。少なくとも横文字をそのままカタカナで読ませるだけの仕事よりは創意工夫が感じられる。センスはともかく。


…と、ここまで書いてきてハッと気づいたけど、横文字をそのままカタカナで読ませるだけのタイトルの方が、実は親切なのかもしれない!


外国人と映画の話をしてて、原題がわからなくて困った事があるのだ。『アパートの鍵貸します』が『THE APARTMENT』だとか、『俺たちに明日はない』が『Bonnie and Clyde』だとか、『氷の微笑』が『Basic instinct』とか、言われてみれば「あっ、そんなもんなの」という感じなんだけど、知らないとどうしようもない。そういう意味では、いっそ全て原題で公開してもらった方が、あとあと便利で良いかもしれない。


とは言え、たとえば『硫黄島からの手紙』が原題のまま『レターズ・フロム・イオジマ』だったら、やはりこれだけ大ヒットはしなかったのではないだろうか……『ラヴレター・フロム・カナダ』みたいで(←古すぎ)