ジキル博士のモラトリアム

WONO2007-01-24



雑事に追われてるとあっという間に夜。で、夜中、家人が寝静まると作曲にとりかかる毎日が続いている。


いよいよニューアルバムの楽曲制作も佳境に入り、これまでつくったトラックをもう一度聴き直して構成をいじったりフレーズを移動させたりミックス・バランスを変えたりと、延々やっている。


コンピュータ上の作曲は、1人でどこまでも追求できるし、途中経過を保存して何度でもリコールできるから、作業に際限がない。譜面の作曲であれ何であれ、ふと「ここまでだな」と悟ればそれが止め時。というのがセオリーなのだが、なまじ何度でもやり直せるだけに「悟り」がいつまでたっても来ないというのが大問題だ。


特に観たい番組もないのに「どこか他局で何かオモロい番組やってるに違いない!!!」と目を血走らせながらリモコン片手にTVのチャンネルを変え続ける出張の夜のビジネスホテルの部屋のような優柔不断かつ本末転倒な状況と、それはどこか似ていなくもない。


実際、深夜に作業してるもんだから、耳の判断に自信が持てないという面もある。ほら、よく言うでしょう。夜中に書いたラヴレターは朝読み直してから投函しろって。


ずーっと反復して同じ曲を聴いてると明け方あたりにはノンドラッグなのにドンギマり状態になってくるので(単なる神経疲労か?)音がどうであれカッコ良く思えてきたりするのだ。ほら、よくあるでしょう。終電を逃がして誰かの下宿で徹夜飲みしたりしてる時、朝3ー4時ぐらいになると「誰がどんなくだらないジョーク言っても全員が爆笑してしまう、空虚な盛り上がりの時間帯」に突入することって。


で昼間あらためて聴くと今度は夜中のように精神がドンギマってないもんだから「こんなもんだっけ?」とやけに醒めた批評的な態度に終始してしまい、OKが出せなくなる。その結果、夜になるとまた作り直しが始まる …まるで「ジキル博士とハイド氏」のような創作上の二重人格だなこれって。


ま、しかし、二重人格だか何だか知らないが、そういった行き来の作業を延々と続けるのが好きなのだから、しょせん粘着質な人間ではある。これはこれで幸せな「永遠のモラトリアム」なのかもしれない。


とは言え、いよいよそうも言ってられない時期に突入しつつあるなー。 出せるのか? CD!


(写真は本文とは関係ありません)