ゴダール=モテ系


ゴダールについて書いた先日の本誌を、めざとくチェックしてくれたサエキけんぞうさんにメールをいただきました。

いわゆる通常の映画のイベントをしただけだったのですが、
なんと、DVDに収録というのは、
強烈な後付の話しだったのです・・・
もう油断もスキもなく・・・


と赤面(推定)のご様子でした。
いやいや、活字化を前提としていないがゆえの「放談」の楽しさが溢れているところが、最高ではありませんか。


それにしてもゴダールについて語るとき人はなぜこう饒舌になるのだろうか? もちろん当方も含め。
とつぶやいていたら妻が「モテる人と同じね」と、また意味ありげな箴言を吐いた。


モテる人ってのは、まず寡黙である。「それでさ、私ね、私ね…」とべらべら話し続ける人がモテたためしはない(性別問わず)。意味ありげな沈黙。あるいは時折発せられる気の効いた台詞を取り囲む、饒舌な沈黙。その沈黙に耐えられなくなり、あわててぺらぺら話し始めてしまうとしたら、それは貴方が既に恋におちている証拠。


そして、モテる人ってのは、鮮烈なのである。ハッとさせ、目を止まらせ、忘れられない一瞬の光景をつくり出し、立ち会った人に鮮やかな印象を残す。貴方は一日中その姿をフラッシュバックさせ続け、授業も仕事もうわのそら。


さらに、モテる人ってのは、気まぐれだ。予想もつかない行動に出る。途方もなく甘く優しく抱きしめてくれたかと思えば、とりつくしまももなく冷淡だったりする。貴方はその真意が知りたくて一日中悶々と悩み続けるだろう。


うーん。これって、確かにゴダール映画の特徴ではないか。


そしてこのような比喩をぺらぺらと話し続けてしまっちゃってるってこと自体、当方もまたそんなモテ者を遠目に見ながら近づきたくて近づけない一介の崇拝者であることの何よりの証拠なのだな。