禁酒


「禁酒」とは「禁断の酒」の略である。(嘘)

中毒性があるとして、発祥の地スイスで約1世紀にわたり禁止されていた蒸留酒アブサン」が1日、正式に解禁された。19世紀から20世紀初頭にかけてフランスを中心に欧州で大流行し、ランボーボードレールゴッホら詩人、画家のインスピレーションの源になったともいわれるが、幻覚症状を起こすなどとして、各国で非合法化された。しかし近年「科学的に見て問題ない」と結論付けられ、再び市場に出ることになった。時事通信 - 2005年3月1日)
http://www.rakuten.co.jp/malt-takamura/436321/437250/437256/


これを快挙と言わずしてどうする。日本全国のアルコホリスト諸兄同様、当方も思わず釘付けになっちまったこのニュース。ここにも書かれてあるように数々の芸術家が愛飲した伝説の酒として、あるいは日本ではむしろ水島新司先生の野球漫画のタイトルとして、さらには坂本龍一氏が長髪髭面の若者だった頃「あぶ」と呼ばれていたという逸話などから(知らんか誰もそんなトリビア)「何か知らないけど強くてヤバい酒なんだろーなー」と思ってた方、多いのでは?


だいたい酒飲みってヤツは、アルコールは強ければ強いほど、ドライであればあるほど、エラいと思ってるふしがある。(例としてドライマティーニの話を始めると… 日記が終わらなくなっちまうのでやめときますが(笑))ランボーがこれ飲んでアフリカに家出しちまったとか、19世紀にはこれ飲んで何千人も発狂したとか聞くと(本当かよ)これはもう飲む麻薬か?アルコール度数が90度も100度もある、とんでもない火酒なのではないか?と思ってしまいますわな。あげく発売禁止になったということで、軟弱な現代に生きる我々としてはアブサンディフュージョン・ラインと言われるウゾやペルノでも飲んで、古き良き(酔き)時代に思いを馳せるしか許されなかったわけだ。両切りのゴロワーズに思いを馳せながら吸うマイルドセブンライトみたいなものか?(←煙草吸わないので全然でたらめ)


しかしこれが実は大して強いものでも危ないものでもなかったというのが伝説の酒の「伝説」たるゆえんか。


まあ55度でも相当に強い方ではあるが、ウォッカとかスピリタスとか、上には上がありますからね。しかし、酒飲みの心理としてはよくわかる。要するに「逃がした魚は大きい」の原理だよね。手に入らないとなると、とたんにその酒が美味そうに思えて、飲みたくて飲みたくてしょうがなくなるのが呑み助ってものだ。そんなところから酒場で噂話だけが膨らんでいったに違いない。そうに決まってる。


「あのアブサンという酒、この世の物とも思えない美味さらしいですぞ」
「さぞかし強いんでしょうなあ」
「そりゃあもうアナタ、あのゴッホがこれ飲んで自分の耳を切り落としたぐらいですぞ」
ゴッホは酒以前に精神を病んでいたんではないですかな」
「そんな事ぁいいの! とにかくそのぐらいヤバい酒だちゅう事です」
「ニガヨモギを使った酒と聞いてますが。ペルノとは違うんですかね」
「あんなものアナタ、アブサンに比べれば青汁みたいなもんですわ。ワインと葡萄ジュースぐらい違いますよ」
「はあ、そんなものですか。飲んでみたいものですな」
「飲んでみたい飲んでみたい」


しかし、これほど巧妙なプレミアの付け方もないかもしれない。なにせ100年かけて飢餓感を煽ったわけだから売れますよこれは全世界的に。買うなら今だ!!!!!!!!


(これが案外、拍子抜けする味だったりして、再び歴史の闇に消えていったりしない事を切に祈ります……。)